同じメガバンクを何度もだました詐欺師 30億円のジェット機に担当者を乗せて融資引き出す「錬金術」
- 2016/02/22
- 17:57
同じメガバンクを何度もだました詐欺師 30億円のジェット機に担当者を乗せて融資引き出す「錬金術」
産経新聞 2月22日(月)17時5分配信
同じメガバンクを何度もだました詐欺師 30億円のジェット機に担当者を乗せて融資引き出す「錬金術」
ペーパーカンパニーを使った融資詐欺の被害に遭ったみずほ銀行神谷町=東京都港区(写真:産経新聞)
数々のペーパーカンパニーや偽名を使い、銀行から1億円単位で融資を不正に受けていた詐欺グループが逮捕された。融資の審査担当者をだますため、取引記録や決算書類の偽造はお手の物。30億円以上もするビジネスジェットまで購入する徹底ぶりで、銀行の融資担当者を手玉に取った。無から無限の金を引き出す“錬金術”のあきれた手口とは-。
■詐取した融資は5億円超 被害はさらに拡大か
数年前、いまや国際空港として世界中から航空機が飛び交う羽田空港。みずほ銀行神谷町支店の融資担当者の眼前に現れたのは、30億円を超える本物のビジネスジェットだった。
担当者は、ジェットの所有会社を名乗る男らに勧められるまま機体に乗り込んだ。窓の外に見える東京都下の風景は、高度を上げるごとに小さくなっていく。自らが融資を決めた巨額の資金も、その風景と同様、徐々に消えていってしまうとは知りもしなかった。
ジェットを用意したのは、3人の詐欺師だった。
昨年12月から2月にかけて、警視庁捜査2課は詐欺容疑で、会社役員の西田信義容疑者(69)ら3人を3度にわたって逮捕した。3回の逮捕容疑とも、いずれも実体のない会社を取引実績があるとみせかけて、銀行から巨額の融資を引き出してだまし取る手口だった。
いずれも被害者となったのは3大メガバンクの一角のみずほ銀行だが、捜査2課はほかの金融機関からも1億円単位で融資を引き出してだまし取っていたとみて調べている。
■30億のジェット機で審査担当者を手玉に
西田容疑者らの目に銀行は、さしずめ限度額のない現金自動預払機(ATM)のように写っていたのかもしれない。ビジネスジェット機に米軍施設…。融資の現場ではあまり耳にすることのないキーワードを、詐欺の枕詞として繰り出し続けていた。
ビジネスジェットを見せつけて計1億円をだまし取ったみずほ銀行神谷町支店の融資担当者に対しては、品川区の航空機運航会社を名乗って接近した。
30億円以上するビジネスジェットを別の関連会社名義で購入し、担当者も乗せるだけでなく、銀行にはフライトスケジュールなども提出。全くのでたらめだったが、ビジネスジェットはちゃっかり別会社に貸してリース料を得ていた。
みずほ銀行五反田支店には「米軍施設にさまざまな機器を納入している」などと言って、20年8月に設立した別のペーパーカンパニーを名乗って融資を申し込んだ。
西田容疑者らが所有していた国内外の複数の口座間で手持ちの資金を出し入れして、実際に米軍などと多数の取引があるように見せかけ、それに合わせて決算書類も偽造。何度も小口の融資を受けてはきっちり返済することで、銀行側の信頼を獲得していった。
結局、五反田支店から21年4~7月に3億円を借り入れたほか、同年10月にも「法人税に5700万円、賞与に5千万円を支払う予定」などと説明して1億700万円をだまし取った。
■「つなぎ融資」「偽名」…だましの技術がてんこ盛り
なぜ、複数の金融機関はだまされ続けたのか。
企業にとって、融資は事業の拡大だけでなく、運転資金の確保という面からも欠かせない要素。一方、銀行側からすれば、数億円にも上る融資が焦げ付いては元も子もなく、審査が甘いはずはない。管理職や支店長など複数の目を通されるはずだ。
捜査関係者は、西田容疑者らが融資を申し込む「名目」に注目する。
捜査2課によると、西田容疑者らが申し込んだ融資は、ほとんどが法人税や賞与のためのつなぎ資金。要は、予想以上に法人税や賞与を払うことになったため、事前に借り入れが必要というわけだ。
捜査関係者は「法人税は利益が出ないとかからないし、賞与は業績がよくなければ増えない。どちらも急に入り用になるということは、『それだけ業績が好調だ』と印象づけようとしたのでは」と分析する。
古典的だが「偽名」の活用も有効だった。西田容疑者は「大和田透」と偽名を名乗り、別の容疑者も旧姓を使っていた。
同じ名前で複数の巨額融資を申し込めば銀行の警戒はいやが上にも増すが、名前も会社名も毎回違えば、厳しい審査の間隙を縫うこともできる。
捜査関係者は「銀行側が同一人物と判定できていないため、この3人が関わった事件がどれほどあって、被害はどれくらいかという全体像の把握も難しくなっている」と明かす。
■実はさほど潤わず…実態は自転車操業
鮮やかに銀行を手玉にとり続けていたように見える西田容疑者らだが、ふところ事情はそれほど潤っていたわけでもなさそうだ。
それもそのはず。1つの企業を偽装するのに30億円以上もするビジネスジェット機を購入していては、1億円程度だまし取っただけでは割に合わない。
捜査関係者は「西田容疑者らは生まれながらの詐欺師」と断言とした上で、こう推測する。「取引を偽装するために金を回して回して、舞台装置を用意して、その借金を返して、と金を動かし続けて自転車操業で詐欺を続けていたのでは」
詐欺師のライフワークに糧にされては銀行もたまらない。
産経新聞 2月22日(月)17時5分配信
同じメガバンクを何度もだました詐欺師 30億円のジェット機に担当者を乗せて融資引き出す「錬金術」
ペーパーカンパニーを使った融資詐欺の被害に遭ったみずほ銀行神谷町=東京都港区(写真:産経新聞)
数々のペーパーカンパニーや偽名を使い、銀行から1億円単位で融資を不正に受けていた詐欺グループが逮捕された。融資の審査担当者をだますため、取引記録や決算書類の偽造はお手の物。30億円以上もするビジネスジェットまで購入する徹底ぶりで、銀行の融資担当者を手玉に取った。無から無限の金を引き出す“錬金術”のあきれた手口とは-。
■詐取した融資は5億円超 被害はさらに拡大か
数年前、いまや国際空港として世界中から航空機が飛び交う羽田空港。みずほ銀行神谷町支店の融資担当者の眼前に現れたのは、30億円を超える本物のビジネスジェットだった。
担当者は、ジェットの所有会社を名乗る男らに勧められるまま機体に乗り込んだ。窓の外に見える東京都下の風景は、高度を上げるごとに小さくなっていく。自らが融資を決めた巨額の資金も、その風景と同様、徐々に消えていってしまうとは知りもしなかった。
ジェットを用意したのは、3人の詐欺師だった。
昨年12月から2月にかけて、警視庁捜査2課は詐欺容疑で、会社役員の西田信義容疑者(69)ら3人を3度にわたって逮捕した。3回の逮捕容疑とも、いずれも実体のない会社を取引実績があるとみせかけて、銀行から巨額の融資を引き出してだまし取る手口だった。
いずれも被害者となったのは3大メガバンクの一角のみずほ銀行だが、捜査2課はほかの金融機関からも1億円単位で融資を引き出してだまし取っていたとみて調べている。
■30億のジェット機で審査担当者を手玉に
西田容疑者らの目に銀行は、さしずめ限度額のない現金自動預払機(ATM)のように写っていたのかもしれない。ビジネスジェット機に米軍施設…。融資の現場ではあまり耳にすることのないキーワードを、詐欺の枕詞として繰り出し続けていた。
ビジネスジェットを見せつけて計1億円をだまし取ったみずほ銀行神谷町支店の融資担当者に対しては、品川区の航空機運航会社を名乗って接近した。
30億円以上するビジネスジェットを別の関連会社名義で購入し、担当者も乗せるだけでなく、銀行にはフライトスケジュールなども提出。全くのでたらめだったが、ビジネスジェットはちゃっかり別会社に貸してリース料を得ていた。
みずほ銀行五反田支店には「米軍施設にさまざまな機器を納入している」などと言って、20年8月に設立した別のペーパーカンパニーを名乗って融資を申し込んだ。
西田容疑者らが所有していた国内外の複数の口座間で手持ちの資金を出し入れして、実際に米軍などと多数の取引があるように見せかけ、それに合わせて決算書類も偽造。何度も小口の融資を受けてはきっちり返済することで、銀行側の信頼を獲得していった。
結局、五反田支店から21年4~7月に3億円を借り入れたほか、同年10月にも「法人税に5700万円、賞与に5千万円を支払う予定」などと説明して1億700万円をだまし取った。
■「つなぎ融資」「偽名」…だましの技術がてんこ盛り
なぜ、複数の金融機関はだまされ続けたのか。
企業にとって、融資は事業の拡大だけでなく、運転資金の確保という面からも欠かせない要素。一方、銀行側からすれば、数億円にも上る融資が焦げ付いては元も子もなく、審査が甘いはずはない。管理職や支店長など複数の目を通されるはずだ。
捜査関係者は、西田容疑者らが融資を申し込む「名目」に注目する。
捜査2課によると、西田容疑者らが申し込んだ融資は、ほとんどが法人税や賞与のためのつなぎ資金。要は、予想以上に法人税や賞与を払うことになったため、事前に借り入れが必要というわけだ。
捜査関係者は「法人税は利益が出ないとかからないし、賞与は業績がよくなければ増えない。どちらも急に入り用になるということは、『それだけ業績が好調だ』と印象づけようとしたのでは」と分析する。
古典的だが「偽名」の活用も有効だった。西田容疑者は「大和田透」と偽名を名乗り、別の容疑者も旧姓を使っていた。
同じ名前で複数の巨額融資を申し込めば銀行の警戒はいやが上にも増すが、名前も会社名も毎回違えば、厳しい審査の間隙を縫うこともできる。
捜査関係者は「銀行側が同一人物と判定できていないため、この3人が関わった事件がどれほどあって、被害はどれくらいかという全体像の把握も難しくなっている」と明かす。
■実はさほど潤わず…実態は自転車操業
鮮やかに銀行を手玉にとり続けていたように見える西田容疑者らだが、ふところ事情はそれほど潤っていたわけでもなさそうだ。
それもそのはず。1つの企業を偽装するのに30億円以上もするビジネスジェット機を購入していては、1億円程度だまし取っただけでは割に合わない。
捜査関係者は「西田容疑者らは生まれながらの詐欺師」と断言とした上で、こう推測する。「取引を偽装するために金を回して回して、舞台装置を用意して、その借金を返して、と金を動かし続けて自転車操業で詐欺を続けていたのでは」
詐欺師のライフワークに糧にされては銀行もたまらない。
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